大阪府立図書館が昭和18年9月「川崎巨泉畫伯遺墨 人魚洞文庫繪本展覽會」を開催した。その展覧会の目録から序文を紹介する。
昨年九月人魚洞主人川崎巨泉画伯逝去せらるるや、その遺族、画伯畢生の玩具写生帖「人魚洞文庫」百二十冊外に索引四冊を添え挙げて本館に寄贈せらる。
画伯はもと浮世絵師歌川派芳瀧の門に出づ。夙くより郷土玩具に趣味を有し、その蒐集と調査とに力を致す。描くところの古玩、郷玩数千種に及ぶ、即ち「おもちゃ画家」として明治末期より大正、昭和の三代に亘り、特異の存在たりしは、斯界の熟知するところ、敢て贅言を要せず。
今や挙国大東亜建設に奮闘しつゝあるの時、本邦固有の古玩、郷玩を通じて、聊か日本民族精神の把握と、尚武の民風作興とに資する所あらんとし、茲に「人魚洞文庫絵本展覧会」を開催す。適々故人の周忌に際会し、画伯追慕の情切なるものあり、乃ち諸家に請ひ、画伯の遺墨、遺愛の玩具等を恩借し、併せて一堂に展観し、汎く遺芳を伝へんとす。
目録成るに当り出陳賛同の各位に深甚の謝意を表すると共に一言述べて序となす。
昭和癸未年九月
大阪府立図書館長 長田富作
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